夜尿症 おねしょをするのはなぜですか?ー大和クリニック-木更津市の泌尿器科

 夜尿症 の定義とはどういうものですか?

5才以降、1ヶ月に1回以上かつ3ヶ月以上、寝ている間に無意識に尿が漏れる状態です。

 夜尿症 の頻度はどの位ですか?

夜尿のみで、他に下部尿路の症状を伴わない夜尿症では、5才で15%、7才で10%、10才で5%、15才以上で1~2%とされています。男女比2:1で低年齢では男児に多く、10才以降は差がなくなります。思春期までに14%ずつ自然に軽快します。世界各国でその頻度にほぼ差がないと言われています。0.5%~数%は成人になっても持続するとされています。特に毎晩夜尿がある子供では成人まで移行するリスクが高いと言われています。夜尿の既往のある子供は大人になって、切迫性尿失禁などの別の下部尿路症状を発症する可能性が高いとの報告もあります。

 夜尿症 は、なぜ自然に軽快するのに治療が必要なのですか?

1)治療をすることで、治癒率を2~3倍高めることができ、また治癒までの期間を短縮できます。
2)おねしょをすることで、自分が周囲の子供たちより劣っているというネガティブな感情を持つことがあるためです。おねしょが減ることで精神的に好影響がでます。
3)保護者や同居人の生活の質を低下させるためです。パジャマやシーツなどの洗濯、その他で大変です。
4)小学校高学年では宿泊を伴う行事があるため、おねしょをなくしていた方が良いためです。
5)おねしょを来した原因が、他の治療を要する病気からきているかもしれないためです。

 夜尿症 は何才から治療を開始するのですか?

1)昼間のお漏らしや、便のお漏らしがある場合は、未就学児(5才)であっても医療機関に受診するのがいいです。
2)ほぼ毎日夜尿があるときは小学校1~2年生であっても、受診を検討するのがいいです。
3)週数回夜尿があるときは小学生3年以降の場合、受診を検討するのがいいです。

一次性夜尿症(下記夜尿症の分類参照)に対しては小学生低学年(10才未満)での治療開始の方が、最終的に夜尿症を早くなおせる可能性があると報告されています。

 夜尿症 の原因は何ですか?

1)尿意で目をさますことができないため(覚醒障害)—睡眠のリズムを含めた睡眠の質が悪い可能性があります。
2)睡眠中の膀胱の働きが未熟なため、膀胱にためることができる尿量が少ないため(膀胱の容量が小さい、ある程度膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮してしまう、など)
3)夜間尿量が多いため
1)+2)、1)+3)または1)+2)+3)で夜尿症が起きると言われています。つまり覚醒傷害を基盤として、夜間多尿、膀胱蓄尿量の少なさが加味されて起こるとされています。。
補助的な要因として、発達の遅れ、遺伝的素因(両親のいずれかに夜尿の既往がある場合、子供が夜尿症となる確率は5~7倍に高まり、両親ともに夜尿症の既往がある場合、11倍に高まります)などがあります。
鼻炎や扁桃肥大などの就寝中の睡眠呼吸障害も一因となります。

 夜尿症 の分類にはどういうものがありますか?

一次性夜尿症:夜尿が消失していた期間があったとしても6ヶ月に満たないものを一次性夜尿症と言います。
二次性夜尿症:6ヶ月以上消失していた期間があるものを二次性夜尿症と言います。
一次性夜尿症は75~90%、二次性夜尿症は10~25%の頻度です。

単一症候性夜尿症:昼間のお漏らしなど下部尿路症状を合併しない夜尿症です。75%程です。
非単一症候性夜尿症:下部尿路症状を合併する夜尿症です。25%程です。
下部尿路症状とされる症状は、排尿回数が一日3回以下または8回以上、昼間のお漏らし、我慢しきれない尿意、尿が出づらい、尿に勢いがない、断続して排尿するなどです。

それではどのように 夜尿症 を診察していきますか?

夜尿症の診察では何を聞きますか?

ご家族に夜尿症の既往いつですか?遺伝的素因を確認します。肥満はないか?睡眠時無呼吸症候群の家族歴、過度の口渇や多飲はないか?糖尿病の家族歴も聞きます。

昼間のおむつが取れた時期はいつですか?(昼間のおむつが取れるのは2才6ヶ月~3才6ヶ月の間です)また神経発達の遅れがないか確認します。自閉スペクトラムなどがないかどうか?夜尿症の約30%に発達障害であるADHA(注意欠如・多動性障害)を合併しているという報告もあります。

便秘はありますか?遺糞(不適切な状況で排便してしまう)はありますか?
便秘の治療で夜尿症の改善がみられたとの報告もあります。遺糞は重症夜尿症のリスクファクターです。

夜尿症の頻度はどのくらいですか?1週間に4回以上の夜尿を頻回、3回以下の夜尿を非頻回と定義されています。頻回の夜尿症は非頻回に比して夜尿アラーム療法の良い適応になります。

6ヶ月以上おねしょをしない時期はありましたか?
夜尿が消失していた期間が6ヶ月以上あるにも関わらず、再び夜尿が認められる場合、二次性夜尿症といわれ、夜尿症の25%が該当します。二次性夜尿症には精神的ストレス(両親の離婚、兄弟の誕生、いじめ、近親者やペットとの死別、部活動や受験勉強のストレスなど)や精神疾患(トイレ恐怖症など)の併存率が高いです。また基礎疾患(糖尿病、尿崩症、甲状腺機能亢進症、高カルシウム尿症、痙攣性疾患、腎疾患、睡眠時無呼吸症候群、神経因性膀胱、尿道狭窄など)を有する可能性があります。

夕食の時刻、その時の飲水料、夕食から寝るまでの飲水料、就寝時刻、起床時刻、カフェイン入り飲料を飲む習慣、喘息の治療でテオフィリン製剤を服用していないか、夜間睡眠中に起きて飲水していないか等を聞きます。

昼間のお漏らしの有無を聞きます。お漏らしするとしたら量は多いか少ないか?あわててトイレに駆け込んで行かないか?下着に尿臭がしないか?急に思いたったようにオシッコがしたいと言い出さないか?排尿回数は少なくないか?オシッコが出にくくないか?オシッコをするとき、痛くないか?排尿を我慢する姿勢をとってないか?

 夜尿症 の診察は、どのようにしますか?

身長、体重、高血圧の有無を確認します。扁桃肥大、いびきをかいてないか、便塊がないか(便秘や遺糞を示唆)、仙骨部に異常な発毛や陥凹、膨隆(脊髄脂肪腫などの脊髄障害)などを診ていきます。下肢や会陰部に神経学的異常がないか?強い包茎や尿道開口部異常(尿道下裂)や陰唇融合、昼夜を問わず持続的に下着が湿っている場合異所性尿管開口を疑います。この時は会陰部に発赤、かゆみなどの皮膚症状がある場合もあります。

 夜尿症 の検査はどのようにしますか?

検尿をします。尿カルシウム・クレアチン比も調べます。起床時第一尿で3回調べます。なるべく夜尿がなかった翌朝のものを調べます。夜尿を呈する基礎疾患(糖尿病、尿崩症、水中毒、尿路感染症、特発性尿カルシウム尿症などの除外のために、また抗利尿ホルモンを使用するときのために、低浸透圧尿(早朝尿比重1.022以下または尿浸透圧800mOsm/kg以下)を確認します。

尿培養を検尿で尿路感染症の疑いがあるときに追加で行います。

超音波検査をします。夜尿を呈する基礎疾患(潜在性二分脊椎、水腎症や尿路拡張など先天性腎尿路異常、尿路結石症、神経因性膀胱など)を除外するために行います。また便秘の程度をみるために行います。

血液検査を必要に応じてします。体重減少、成長障害、悪心、口渇や多飲などの症状があるときは、腎機能、血糖値、電解質(血清ナトリウム値など)、抗利尿ホルモン、血清浸透圧などを調べます。夜尿を呈する基礎疾患(腎機能障害、尿崩症、糖尿病など)を除外するために行います。

その他状態に応じて、腰仙椎X線検査、膀胱鏡、膀胱尿道撮影、頭部CT、脊髄MRI、脳波など専門の病院で検査されます。

 夜尿症 の治療はどのようなものがありますか?

排尿日誌排便日誌などをつけていただき、状態を把握します。小学校入学前の5~6歳児の夜尿症の方は、自然治癒率が高いので、原則として生活指導・行動療法のみ行います。

生活の指導・行動療法:適切な姿勢で排泄すること、尿意や便意を感じたら我慢しないこと、寝る前に必ず尿をすることをしていただきます。朝食・昼食時に水分を十分とり午後から控えます。夕方以降の塩分・水分摂取制限(夕食はできるだけ就寝3時間前に済ませ、夕食後は200ml以内の水分摂取にとどめることなど、口渇が強いときはうがいをさせたり、氷2~3個を食べさせてみます)、糖分やタンパク質も塩分同様尿量が増すため、牛乳、フルーツ、アイスクリーム、糖分の多い飲料も、夕方以降にたくさんとることは控えていただきます。就寝2~3時間前にはカフェイン入り飲料(コーヒー、紅茶、緑茶、ソフトドリンクにもカフェイン入り飲料があります)を控えていただきます。体を温めて就寝してもらいます。睡眠中の寒さや冷え対策、便秘対策、排尿訓練を行います。

②積極治療(生活指導・行動療法などで改善しないときに併用して行います)
1)抗利尿ホルモン剤(ミニリンメルト口腔内崩壊錠)は、尿浸透圧あるいは尿比重の低下を伴う夜尿症に適応があります。夜間尿量を減少させる効果のあり、就眠前に使用します。舌下投与(舌の裏に置き、たまってくる唾液で溶かす)で容易に溶ける口腔内崩壊錠ですので水なしでも容易に服薬できます。副作用としての水中毒を防ぐために就眠前2-3時間以内の水分制限が必要となります。70%の人に効果があります。

2)夜尿アラーム療法は夜尿症の方の未熟な排尿反射抑制神経回路を膀胱が充満したときに覚醒させることで強化する、ある種の条件付け療法と考えられています。効果のある方は睡眠中の膀胱容量の増加がみられるとのことです。濡れたら鳴るアラーム(ブザー)で患者を夜尿直後に起こす治療で、自分で起きない場合は家族の協力が必要となります。70%の人に効果があります。速効性はなく、効果がでるまでに数ヶ月以上かかることも多いです。

3)抗コリン薬は最大膀胱容量の増加と膀胱に尿が溜まると膀胱が勝手に収縮してしまうことを減少させます。昼間に尿漏れが起こる方や抗利尿ホルモンや夜間アラーム療法が無効な場合、治療抵抗性の方の選択肢の一つになります。

4)三環系抗うつ薬の薬理作用は解明されていません。治療抵抗性の方の選択肢の一つになります。副作用に注意が必要です。

一般的に第一選択はミニリンメルト口腔内崩壊錠または夜尿アラーム療法です。まず単独で行います。学校の宿泊行事で時間がない場合、速効性のある抗利尿ホルモン療法を、1週間に3回以上夜尿があり、急がない場合は夜尿アラーム療法が良い適応です。効果が不十分な時、これらを併用する治療を行います。

 昼間尿失禁 (昼間のお漏らし)がある人はどうするのですか?

昼間尿失禁と夜尿症が同時にある子供では、昼間尿失禁の治療をして、ある程度改善してから、夜尿症の治療を行うのが一般的です。

昼間尿失禁の原因は何ですか?

1)蓄尿排尿メカニズムの発達障害
過活動膀胱:5才以降も反射的排尿を抑制する神経機能が十分発達しないで、膀胱が勝手に縮み、尿が十分たまっていなくても排尿してしまう状態です。
排尿遅延習慣:最大尿意が突然訪れ、非生理的に尿意を押さえ込もうとしますが(排尿我慢姿勢)、トイレに間に合いません。

2)機能障害性排尿:正常発達過程を逸脱した蓄尿排尿メカニズムのひとつです。

3)先天的尿路異常(二分脊椎に伴う神経因性膀胱、尿道狭窄など)や尿路感染症などがある場合です。

昼間尿失禁の治療はどうしますか?

1)行動療法:①適切な姿勢でゆっくり時間(2分間程度は便座に座って)をかけて座位による排尿を行います。

②定時排尿(1日6~7回決まった時間に排尿する)をしていただきます。尿意切迫感が起こる前の定時に排尿する週間をつけることで、自らの尿意に気づくことになり改善すると考えられています。排尿すべき時間をセットしたタイマーウオッチを用いて定時排尿を行う方に改善率が高いとの報告もあります。

2)便秘を改善します:便塊除去(浣腸、経口薬としてモビコールなど)、生活指導(食物繊維の多いものを食べること)、緩下剤の投与です。便秘(直腸診で便栓塞あり)を合併した昼間尿失禁かつ/または夜尿症の患者さんに1年間便秘の治療を行ったところ、便秘が改善した方が夜尿症も昼間尿失禁も消失率が高いとの報告もあります。便秘の治療の効果は昼間尿失禁のほうにより高いとの報告もあります。

3)抗コリン薬:上記の行動療法を行いまた便秘が改善しても効果が不十分な場合、膀胱の収縮を抑える抗コリン薬を使用します。

4)発達障害の併存:上記の療法で改善が得られない場合、発達障害の併存を考え、専門医に診ていただきます。      

       

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