じんましん (蚊にあちこち刺されたように、赤くくっきりと盛り上がっています)-大和クリニック-木更津市の皮膚科

じんましんとはどういうものですか?

蕁麻疹(じんましん)は、突然皮膚の一部に膨疹(赤くくっきりと盛り上がった一過性、限局性のむくみ)が、あちこちにできる病気です。数十分から数時間以内に消えるのが普通ですが、中には半日から1日くらいまで続くものもあります。たいてい、かゆみを伴います。持続時間が1日を超えて続き、色素沈着を残す場合は蕁麻疹様血管炎という病気などを考えます。

じんましんとはどんなふうに起こりますか?

蕁麻疹は、皮膚の中の小さな血管が一時的に膨らみ(このため皮膚の表面は赤く見えます)、血液の中の血漿と呼ばれる成分(血液から白血球、赤血球などの細胞成分を除いた液体)が周囲に滲み出た状態(このために皮膚の一部が盛りあがります)にあります。膨疹は表皮の下にある皮膚の真皮または皮下組織の一過性、限局性浮腫ですが、更に深い場所の真皮深層および皮下/粘膜組織の浮腫は血管性浮腫と言います。血管性浮腫は必ずしもかゆみを伴わないで、2~3日持続します。

じんましんの4つのタイプとはどういうものですか?

蕁麻疹は大きく分けて4つに分けられます。一つの蕁麻疹にいくつかの原因が関係したり、同じ人に二つ以上のタイプの蕁麻疹が同時に現れることもあります。

1)特発性蕁麻疹

最も頻度が高い病型です。70%程と言われています。そのうち急性は10%前後です。残りの60%程が慢性です。原因不明です。突然膨疹が出現します。消えたと思っても、他にもつぎつぎ出現します。形、大きさはさまざまです。毎日のように症状が出没する期間が6週間以内のものを急性蕁麻疹、6週間以上経過したものを慢性蕁麻疹と言います。急性蕁麻疹は風邪、気管支炎、尿路感染症などの急性感染症が背景にある場合があります。慢性蕁麻疹では、ほとんどの場合は原因を明らかにすることができません。多くは夕方から夜にかけて現れ、翌朝ないし翌日の午前中頃には消失し、また夕方から出始めるという経過をとります。全身倦怠感、関節痛、発熱などの症状がある場合は他の病気が背景にあるかもしれないので、その症状に対しての検査を行う必要があります。症状が皮膚に限られている場合は、何ヶ月ないし何年間か症状が続いた後、ほとんどの場合はやがて自然におさまっていきます。発症して1ヶ月以上経過した慢性蕁麻疹で、特に皮膚以外に症状がない場合では、あまり詳しい検査を行ってもほとんど異常が見つかることはありません。

2)刺激誘発型の蕁麻疹

1.アレルギー性の蕁麻疹

食べ物(卵、乳製品:牛乳、チーズなど、魚介類:サバ、マグロ、サンマ、エビ、カニなど、肉類:豚肉、牛肉、鶏肉など、穀類・野菜:大豆、小麦、ソバ、トマト、ピーナツ[マメ科の穀物]など)、昆虫(ハチ、ムカデなど)、動物(マムシ、ハムスターなど)、植物、海洋生物(クラゲ、イソギンチャクなど)、薬剤(抗生物質、解熱鎮痛薬、咳止めなど)のアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に曝露(さらされると言う意味です)されることで生じます。特異的IgEを介したⅠ型アレルギー反応でアレルゲンの曝露後、数分から1~2時間以内に生じます。納豆、ほ乳類肉、アニサキスによる蕁麻疹は8~12時間後に遅発性に生じます。

2.食物依存性運動誘発性アナフィラキシー

特定の食べ物(小麦が多いです。次いでエビ、イカ、カニ、ブドウ、ナッツ、そば、魚など)を食べた後、2~3時間以内(長い場合4~6時間)に運動負荷(球技、ランニング、歩行、自転車など)が加わることにより生じるアナフィラキシー反応です。運動以外では非ステロイド性抗炎症薬、感冒、睡眠不足や疲労などのストレス、アルコール摂取などが関与します。好発年齢は10才代と30才代です。

3.非アレルギー性の蕁麻疹

原因物質への曝露によりアレルギー(Ⅰ型アレルギー機序(IgE))を介さないで発症します。原因物質として、造影剤、食物:ヒスタミン、ヒスタミン類似物質含有食品(サバ、タケノコなど)、食品添加物などがあります。

4.アスピリン蕁麻疹

アスピリンをはじめとする非ステロイド性抗炎症薬の内服、注射、外用などにより誘発されます。非ステロイド性抗炎症薬のもつシクロゲナーゼ阻害作用によると考えられています。蕁麻疹、血管性浮腫、ないし両者が同時に誘発されます。人工食品着色料、防腐剤などの化学物質に対しても過敏性を示すことが多いです。膨疹が現れるまでの時間は数分から数時間の間で、幅があります。

5.物理性蕁麻疹

皮膚表面の機械的摩擦、寒冷曝露、日光照射、温熱負荷、圧迫、水との接触のいずれかにより生じます。

6.コリン性蕁麻疹

入浴、運動、精神的緊張など、発汗ないし発汗を促す刺激が加わったときに生じます。皮疹の膨らみ(膨疹)が1~4mm程度と小さいことが特徴です。小さな発赤がつながったようになることはありますが、他のタイプの蕁麻疹のように大きな平べったい膨らみにはなりません。通常、膨疹の周りを発赤が取り囲みますが、逆に周りが白く抜けたようになることもあります。ピリピリとした痛みや痛がゆさを訴えることが特徴です。小児から30才代前半までの成人に好発します。重症例では血管性浮腫やアナフィラキシーショックに至ることもあります。通常数分から2時間以内に消退します。

7.接触蕁麻疹

皮膚ないし粘膜に特定の物質が接種した直後(数分から通常30分以内)に接触部分に誘発されます。非アレルギー性の接触蕁麻疹にはイラクサ(植物)、クラゲ、昆虫、化学物質などに触れた時に起こります。はじめて触れた場合でも生じます。触れた部位以外に拡大することは少ないです。アレルギー性接触蕁麻疹は植物、動物、薬剤、化粧品、化学物質などが関与します。医療従事者がラテックスの手袋で発症するのは有名です。重症例では血管性浮腫やアナフィラキシーショックに至ることもあります。

3)血管性浮腫:血管性浮腫は皮膚・粘膜の深いところの血管が反応します。皮膚・粘膜の限局した範囲に生じる一過性の深在性の浮腫です。そのため通常の蕁麻疹のような境界のはっきりした膨疹ではなく、赤みもあまりはっきりしない皮膚の腫れとして現れてきます。数日以内に消退します。4型あります。特発性、刺激誘発型は肥満細胞に関連しヒスタミンに起因する血管性浮腫で、ブラジキニン起因性、遺伝性はブラジキニンに関連した血管性浮腫です。好発部位はくちびる、まぶたなどの顔です。気道(息の通り道)に生じると窒息の危険があります。消化管に生じると腹痛などが起こります。

1.特発性:原因を特定できないものです。表在性の蕁麻疹は伴うこともあります。

2.刺激誘発型:原因物質曝露後数時間以内に症状が出現します。表在性の蕁麻疹は伴うこともあります。

3.ブラジキニン起因性:高血圧の薬(アンギオテンシン変換酵素阻害薬)よるブラジキニンの不活性化が阻害されることで引き起こされます。内服開始後1ヶ月以内に発症することが多いです。数ヶ月~数年経過した後に発症することもあります。アンギオテンシン変換酵素阻害薬による血管性浮腫の頻度はまれ(0.2~0.7%)です。他の原因薬剤としてDPP-4阻害薬(糖尿病の薬)があります。またB細胞性リンパ増殖性疾患を背景としてC1インヒビターが消耗されるタイプとC1インヒビターに対する自己抗体が産生されるタイプがあります。表在性の蕁麻疹は伴いません。

4.遺伝性:常染色体優性遺伝形式をとり、家族歴も重要です。約25%は孤発例です。およそ5000人に1人の有病率です。80%以上の人が20歳までに症状が出現します。補体C1インヒビターの機能低下もしくは量的低下で生じます。表在性の蕁麻疹は伴いません。喉のむくみのため、食べ物などがうまくのどを通らない、声の変化、嗄れた声、息切れ、ひどいときは窒息します。顔のむくみのため、唇が腫れたり、顔が腫れたりします。腸管のむくみのため、腸閉塞の状態となり、激烈な腹痛を呈することもあります。腕や下肢のむくみのため関節が動かしにくく、痛みがきたりします。精神的ストレス、抜歯、上部内視鏡検査などの医療処置、外傷などが誘引となります。多くは明らかな誘引なく起こります。ブラジキニン起因性と同様、抗ヒスタミン薬やアドレナリン、ステロイドは無効です。数時間から数日で自然寛解することが多いため診断さないでいる人も多いそうです。

4)蕁麻疹関連疾患:蕁麻疹様血管炎、色素性蕁麻疹などがあります。

じんましんの診察はどうしますか?

受診時に症状があるときはアナフィラキシーの有無を確認します。重篤な状態かいなかを確認します。

*「アレルゲンなどの侵入により複数の臓器に全身性にアレルギー症状があらわれて生命に危機を与え得る過敏反応」と定義されています。 複数の臓器とは、皮膚・呼吸器・消化器・循環器・神経などを指します。アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴うものをアナフィラキシーショックと言います。

じんましんの検査はどうしますか?

蕁麻疹の種類によって違います。

アレルギーが関与するものでは、皮膚を用いた検査(プリックテスト、皮内テスト)採血による検査(IgE検査など)などを行います。ただ、この検査が陽性であっても、それらが全て蕁麻疹の原因とは限らないので、最終的には臨床症状やそれまでの経過で合わせて判断をします。

アレルギーが関与しないものでは、誘発試験(それぞれ誘引となる刺激を与えて、蕁麻疹が起こる事を確認する検査)が行われる事もあります。

全身倦怠感、関節痛、発熱などの症状がある場合、炎症、感染が関係していると疑われる場合は、CRP、白血球数、補体(C3、C4、CH50)、ASO、抗マイコプラズマ抗体などを調べます。甲状腺の病気などがあって、蕁麻疹が起こりやすくなってないか、膠原病などの病気の一部として蕁麻疹が現れていないかなども考慮しなくてはいけません。その場合はそれぞれの病気の検査を行います。

遺伝性血管性浮腫ではC3、C4、CH50、C1-INHなどです。C4濃度の低下が急性発作時98%に認められます。C1-INH活性低下(50%以下:基準値70~130%)を確認します。

じんましんの治療はどうしますか?

1)原因、誘因、悪化因子を取り除き、または避けるようにします。

2)薬剤

蕁麻疹には様々な種類がありますが、そのほとんどの場合は結局マスト細胞から遊離されたヒスタミンが血管および神経に働くことで症状が現れます。そこでこのヒスタミンの作用を抑えるために、抗ヒスタミン薬または抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬が用いられます。主に内服薬、注射薬として用いられます。外用薬は多少痒みを軽減する程度であまり大きな効果は期待できません。抗ヒスタミン薬の副作用として、人により眠気を生じやすいこと、前立腺肥大や緑内障などがある人はそれらの症状がひどくなることがあり、使用できない薬もあります。

抗ヒスタミン薬の効果がないときには、2倍に増量したり、併用したりします。その他H2拮抗薬、ロイコトリエン拮抗薬 トラネキサム酸、ノイロトロピン、漢方薬などが使用されます。難治な場合は副腎皮質ステロイド、オマリズマブなどが使用されます。

抗ヒスタミン薬が効かない場合は、慢性蕁麻疹、機械性蕁麻疹、コリン性蕁麻疹がおおいです。ブラジキニン起因性血管性浮腫でも効きにくいです。遺伝性血管性浮腫は特殊な薬剤になります。急性発作のときは、ヒト由来C1インヒビター製剤(ベリナートP)とブラジキニン受容体阻害剤(イチカバンド:フィラジル)が投与されます。発作予防では短期予防薬として、ヒト由来C1インヒビター製剤(ベリナートP)、長期予防薬としてヒト由来C1インヒビター製剤(ベリナートP)とカリクレイン阻害薬ベロトラルスタット(オラデオ)とラナデルマブ(タクザイロ)があります。診療可能な医療機関は千葉大学医学部附属病院腎臓内科などがあります。

アナフィラキシーの既往がある場合

アドレナリン自己注射(エピペン)を携行していただきます。

*エピペンは医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。

じんましんの生活上の注意点は何ですか?

十分な睡眠をとり、疲労やストレスはためないようにしてください。

魚介類や肉類はできるだけ新鮮なものを摂ってください。

防腐剤や色素を含む食品を控えめにしてください。

かゆみが強いときは保冷剤などで患部を冷やしてください。

飲酒もなるべく控えてください。

熱いお風呂は症状を悪化させることがあります。ぬるめのお湯かシャワー(熱くない)にしてください。

下着は綿100%などの素材のものを使用してください。

TEL:0438-25-2515