Admin
そばアレルギー(うどんを食べただけなのに)
更新日:3月29日
Fさんは、もともとそばアレルギーがあると分かっていました。その日友人がどうしてもそばを食べたいと言ったので、そば屋で自分はうどんを注文しました。うどんを食べていたのに、体がかゆくなり、咳が出てきました。やばいと思い、普段から携帯しているエピペン(医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤[アドレナリン自己注射薬])を自己注射しました。症状は治まってきましたが、ぶり返さないか、うどんにもアレルギーがあるのか心配なので、クリニックを受診しました。その店では、うどんもそばと同じ釜でゆでており、ゆで汁にそばのアレルゲン(アレルギーの原因)が溶けてだして悪さをしたのではと言われました。
そばの果実は果皮、種皮、胚から構成され胚、胚乳を食用としています。そばアレルゲンコンポーネント(アレルゲン活性を有する蛋白質)は、水溶性で耐熱性です。ゆで汁にはアレルギーを誘発するアレルゲンが溶け出しています。溶け出したそばアレルゲンは水蒸気中に含まれて空間に拡散します。一部の重度のアレルギーがある人ではそば屋に入店しただけで症状が起こる可能性があります。
横浜市の小学生を対象として行った調査では、そばアレルギーの頻度は0.22%で、男の子に多かったそうです。即時型食物アレルギー全国モニタリング調査ではそばは9番目に多い食物で有り、1.8%を占めています。学童期以降に発症したそばアレルギーは甲殻類アレルギーと同様に耐性を獲得しにくい(自然には治りにくい)と言われています。
そばアレルギーの症状には、蕁麻疹、喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシーなどがあります。一般的なソバの摂取によって引き起こされた食物依存性運動誘発性アナフィラキシーの症例も報告されています。
*アナフィラキシーとはアレルギーの原因物質に触れる、食べる(飲む)、吸い込むことで極めて短い時間のうちに全身にあらわれるアレルギー症状です。
*食物依存性運動誘発性アナフィラキシーとはアレルゲン(アレルギーの原因)である食物を食べるだけでは起こらないで、その後運動すると出現するアナフィラキシーです。このアナフィラキシーがある人は原因食品を接種後4時間は運動を避けるようにします。また誘因となる痛み止めやアルコールなどに注意が必要です。
原因食物別ショック発生率:そばは4位16.5%です。
そばは日本では食品衛生法で特定原材料に指定されており、加工食品中のアレルギー表示義務があります。そばまんじゅう、かりんとう、そば茶、そばがき、そばボーロ、クレープ、調味料添加などがあり食品表示を確認する必要があります。しかし店頭販売やレストランではアレルギー表示義務がないため注意が必要です。西欧諸国では、一般的なソバは特定の料理と混合されることがよくあります。たとえば、餃子、ガレット(そばパンケーキ)、スープ、クッキー、ソーセージ、コショウとして使用されたり、小麦ハンバーガー、お粥に含まれます。パスタとピザなどにも含まれることがあります。一般的なそば殻で満たされた枕もアレルギー反応を引き起こします。
いくつかの症例報告では、一般的なそばとラテックス、ケシの実、ココナッツの交差反応性が示されています。*交差反応(類似の構造をもつ抗原に対してのアレルギー反応)。
市販のそば製品の多くは小麦が含まれており、9割以上が小麦ということもあるそうです。一見そばアレルギーと思えても、小麦アレルギーかもしれません。そば粉100%で打ったそばを十割そば、そば粉80%につなぎとして小麦20%を入れて打ったそばを二八そばと言います。
予防
そば、その加工食品を食べないように気をつける。そば殻の入った枕を使用しない。
腸内環境を整える、皮膚のケアを日頃から行う。そばは特定原材料7品目の一つです。特定原材料7品目とは容器包装された加工食品で表示が義務づけられているアレルギー物質で、卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そばの7品目です。
診断、検査
食事日記
そばアレルゲン成分に対する特異的IgE抗体価を測定します。免疫グロブリンE(IgE)抗体と呼ばれる、血流中のアレルギー型抗体の量をチェックすることで、特定の食品に対する免疫系の反応を測定できます。そばの場合は特異的IgEが低値でも油断できません。
そばのプリックテスト(特異的IgE抗体価より診断精度が高い):少量の食べ物を皮膚につけ、針で刺します。特定の物質にアレルギーがある場合、皮膚に反応が起きます。
そばへの感作に加えて、明らかな即時型アレルギーの既往または経口食品チャレンジテスト(負荷試験)による症状誘発で診断します。負荷試験は深刻なアレルギー反応を引き起こすかなりのリスクを伴います。
治療
・抗アレルギー薬
・気管拡張薬
・ステロイド薬
・アドレナリン自己注射製剤(エピペン®):アナフィラキシーが出現した場合アドレナリンを注射します。アナフィラキシーが起きたことがある患者様は、日常生活でアナフィラキシー反応が生じたときに自分で治療薬(アドレナリン)を注射するために、アドレナリン自己注射薬(エピペン®)の処方を受けることが望ましいです。