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偽装の達人と呼ばれる病気とは?

皆さんもご存じだと思いますが、TBSのテレビドラマ「JIN‐仁‐」では江戸時代にタイムスリップした現代の脳外科医・南方仁(大沢たかお)の活躍を描いています。その中で当時流行した感染症、○○の治療も描かれています。戦国~江戸~明治時代にかけては、多くの患者さんがいたということが、さまざまな記録にあります。第2次世界大戦後、1949年には日本で年間17万6千人余りの患者が発生したと報告されていますが、この頃から、特効薬である抗生物質ペニシリンが実用化・普及し、10年ぐらいの間に激減し、1990年代には年間500人程度の発生になっていました。2000年から2012年までは年間500~800人台を推移していましたが、2013年に1200人を突破し、以降、年々急増し、2016年には4557人、2017年には5820人、2018年7007人でした。2019年、2020年と下降傾向でしたが、2021年に、日本の○○患者の届出数は7873人となり、感染症法に基づく現在の調査が始まった1999年以降で最多を記録しました。今年に入ってからも勢いが衰えず、国立感染症研究所の「IDWR速報データ2022年第25週」によれば、年初からの累積届出数は5283人と5000人を突破しています。日本の○○は、過去最悪のペースで増加し続ける異常事態となっています。さて2022年は何人となるでしょうか?アメリカでも、2020年に133945人で、2016年より52%増加しています。2021年初頭のデータでも、成人における一次および二次○○の増加を示しています。女性は34%増加10,620人、男性は9%増加36,614人となっています。

男性に多いです。男性は20~50歳代前半、女性は20歳代が多いです。明確な増加の原因は不明ですが、SNSを通じた出会いの増加や性風俗サービスの多様化などが考えられています。○○患者の背景は、HIVと同様に、MSM(Men who have Sex with Men男性同性愛者)の方が多い時期もありましたが、最近は風俗で働く若い女性と、風俗(パパ活でも)を利用した男性が最も多いことがわかっています。2019年に32の報告国のうち11か国でセックスワーカーの5%以上に感染し、4か国で10%以上に感染していたそうです。


さてナポレオンやベートーベンもかかったと言われているこの○○という病気は何でしょう?


この病気は、その多彩な症状より偽装の達人と呼ばれている梅毒という感染症です。梅毒は、偽装の達人”the great imitator”と言われるほど、多種多様な病変を、皮膚、陰部、口、腎臓、脳・神経、骨など様々な臓器におこし、また病状が変化していくため、他のいろいろな病気と間違われることがあり、このように呼ばれています。


スピロヘータ科トレポネーマ属の細菌、梅毒トレポネーマによる性感染症です。感染機会(性交、フェラチオ、キスなどで、以前あった輸血用血液製剤を原因とする報告は近年ありません)があってから10~90日の潜伏期間を経て、経時的に段階的に様々な臨床症状が出現します。その間症状が自然に良くなる時期があるため、診断が遅れ、治療開始が遅れるかもしれません。梅毒の経過は必ずしも下記のような経過をとるとは限りません。


第1期梅毒(感染部位での一次病変形成)

梅毒トレポネーマの侵入部位(皮膚や粘膜)に0.5 ~2cmまでの軟骨様の硬いしこりができます。これを初期硬結と呼びます。単発であることが多く、暗赤色、無痛です。男性では亀頭、包皮、女性では大小陰唇、子宮頸部に好発します。唇、手、肛門周囲、乳輪などにも好発します。多くの場合、その後中心に潰瘍が生じ、硬性下疳と言います。病変は無痛性もしくは軽度の疼痛を呈するに留まります。やや遅れて所属リンパ節(例えば鼠径部リンパ節など)が無痛性(有痛性のことも)に腫脹します。これらの一次病変は無治療でも数週間で消退することが多いです。ほっといても消えるため、感染後6週間から6ヶ月で多彩な症状を呈する第2期梅毒になることが多いです。


第2期梅毒(血行性に全身に)

第 I 期梅毒の症状が一旦消失したのち4〜10週間の潜伏期を経て、全身に多彩な皮膚(50~80%の人で手掌・足底にも認められ、この点が梅毒において特徴的とされています)、粘膜(主として口腔内:咽頭、扁桃、舌などに紅斑が出現した後乳白斑となります)に発疹、脱毛(びまん性または小班状の不完全脱毛班)、白斑(爪甲大までの不完全脱色素班)等が出現します。典型的には感染後9週ぐらいで梅毒性ばら疹(爪甲大までの淡紅色班)が出現します。発熱、倦怠感、全身性リンパ節腫大、体重減少等の全身症状に加え、泌尿器系・腎(糸球体腎炎やネフローゼ症候群など)、中枢神経系(頭痛、髄膜炎、脳神経障害など)、筋骨格系(関節炎、骨炎、骨膜炎など)に多彩な症状を呈することがあります。第 I 期梅毒と同様、数週間〜数ヶ月で無治療でも症状は軽快します。


潜伏梅毒(梅毒血清反応陽性で顕性症状が認めらないものをさします)

第 I 期と第 II 期の間、第 II 期の症状消失後の状態を主にさします。 第 II 期梅毒の症状が消失後、再度第 II 期梅毒症状を示すことがありますが、これは感染成立後1年以内に起こることから、この時期の潜伏梅毒を早期潜伏梅毒と呼びます。また、感染成立後1年以上たち、血清梅毒反応陽性で無症状の状態を後期潜伏梅毒と呼びます。第3期梅毒に進行する前に何年も続くかもしれません。潜伏梅毒の患者は無治療でも、その70%は晩期梅毒には移行しないことが知られています。


晩期顕性梅毒

梅毒が未治療のまま経過した場合、感染3年後以降は血中のトレポネーマは消失し、感染力がほとんどなくなります。感染後数年~数十年を経て進行性の大動脈拡張を主体とする心血管症状、ゴム腫(非特異的肉芽腫様病変:皮膚、粘膜、骨に多く見られます)後期神経梅毒(進行麻痺、脊髄癆)などを起こします。


早期神経梅毒

神経梅毒は以前、晩期梅毒の症状と考えられていましたが、現在感染直後から中枢神経(お主に脳脊髄液、脳血管や髄膜に病変を形成)に浸潤することが知られています。早期から症状を呈することがあります。感染後数週間から数年で発症します。髄膜や脳神経を主に病変をきたした場合、早期神経梅毒と言います。


先天梅毒

梅毒に罹患している母体から胎盤を通じて胎児に感染します。未治療の先天梅毒は、新生児に深刻な損傷を引き起こします。


検査

梅毒トレポネーマ抗体、非トレポネーマ脂質抗体、HIVの検査(HIV感染が疑われる場合)など。


治療

抗生物質のペニシリンの筋肉注射、内服。ペニシリンアレルギーがある場合は、テトラサイクリン系抗生物質(ドキシサイクリン、ミノサイクリン)。ペニシリンアレルギーのある妊婦さんはスピラマイシン。近年では、薬剤耐性、特にマクロライド耐性の梅毒も報告されています。


予防

アナルセックスではコンドームを使用する人でも、オーラルセックスで、コンドームを使用しない人が多いそうです。梅毒はオーラルセックスでも、うつります。

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