夜間頻尿 はどうして起こるのですか?-大和クリニックー木更津市の泌尿器科

 夜間頻尿 (寝てから2回以上トイレに起きる)はどうして起こるのですか?

夜間頻尿の原因は大きく3つ考えられています。1)夜間に排尿するおしっこの量が多いこと(夜間多尿・多尿)2)膀胱にためることができる尿が少ないこと(膀胱容量の減少)3)眠れないこと(睡眠障害)です。その原因によって、対処法が異なりますので、まず原因を特定することが大切です。ただ多くの方では複数の原因をお持ちです。50%以上の方が、夜間頻尿の原因となる疾患を3つ以上併発していると報告されています。

 夜間頻尿 の頻度はどの位ですか?

夜間頻尿の定義では寝てから1回以上トイレに行く人を指します。この定義では50才代で約60%、70才代で約90%の人が当てはまります。2回以上行く人では50才代男性20%程、女性15%程で、70才代男性60%程、女性50%程です。夜間頻尿は、排尿に関する症状の中で最も厄介なものとされており、また、最も一般的な症状の一つでもあります。

 夜間頻尿 があるとどうしていけないのですか?

夜に何度もおしっこに起きると当然寝不足になります。また寝ぼけてトイレに行くと転倒などの危険も増えます。疲労、気分の変化、傾眠、生産性の低下、無気力、不注意、認知機能障害などを引き起こす可能性があります。2回以上夜トイレに起きる高齢者では、夜1回以下しかトイレに行かない高齢者に比べて死亡率が1.98倍であったと報告されています。別の報告では死亡率とは関連しないとされています。高齢者の転倒のうち、4分の1は夜間に起きています。このうち、25%は夜間頻尿と直接関係しています。一晩に少なくとも2回以上夜間トイレに行く患者さんは、骨折や転倒に関連する外傷のリスクが2倍以上になります。夜間頻尿は心血管疾患と関連することが知られています。またうつ病とも関連することが知られています。

 夜間頻尿 になりやすい人はどういう人ですか?

夜間頻尿2回以上に対する危険因子は年齢、うつ病、男性、泌尿器疾患(前立腺肥大症、下部尿路症状)、肥満(男女ともに夜間頻尿の発生率を2倍から3倍に増加)、不眠、睡眠時無呼吸症候群、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常、心疾患)などがあります。妊婦は頻繁に夜間頻尿を起こしますが、ほとんど常に出産後約3ヶ月で自然に治ります。

 夜間頻尿 の一番頻度が高い原因は何ですか?—夜間に排尿するおしっこの量が多いこと(夜間多尿・多尿)

24時間尿量のうち夜間尿量が3分の1以上を占める場合を夜間多尿と言います。18才以上の夜間頻尿2回以上の人で、夜間多尿が72~85%を示したとの報告があります。
加齢とともに心機能の低下、高血圧、動脈硬化などで日中の腎血流量が減り、昼間の尿量の低下を引き起こします。この昼間の尿量減少は下肢のむくみとして現れることが多いです。下肢の慢性静脈機能不全(下肢の血の巡りの悪さ)も関連しています。そのむくみが横になることで、夜間は腎血流量が増加し、夜間の尿量が増えます。高齢になると夜間の尿量を減らす抗利尿ホルモンの分泌低下が低下するのも一因です。就寝直前に大量の水分を摂取すること、および日中遅くおよび寝る前にカフェインまたはアルコールを摂取することも、夜間頻尿の一因となる可能性が高いです。夕方からの水分の取り過ぎも一因です。(脳梗塞などで水分を取り過ぎている方もいます。過剰に飲水しても血液の粘度に影響しないです)低酸素になると、夜間の頻回覚醒や頻尿が起きる事が分かっています。腎機能が低下すると尿を濃縮する力が低下し、また夜間の塩分排泄増加も起こり、夜間の尿量が増加すると考えられています。また、高血圧の薬(Ca拮抗薬)、利尿剤、口内乾燥を引き起こす副作用がある薬なども一因です。塩分の取り過ぎも一因です。糖尿病、尿崩症、多飲症、高カルシウム血症、薬物作用などで一日を通して尿量の多い状態(多尿)でも夜間多尿は起こります。尿の過剰分泌は、夜間多尿のように睡眠時だけにとどまりません。

夜間抗利尿ホルモン分泌低下の原因として抗利尿ホルモン受容体の変異、腎疾患、電解質異常、うっ血性心不全、睡眠時無呼吸症候群、薬剤使用(リチウム、利尿剤、テトラサイクリン)、下肢の末梢浮腫を伴う静脈不全などが挙げられます。パーキンソン病も抗利尿ホルモン分泌への影響により、夜間多尿を引き起こすことがあります。

 夜間頻尿 の2番目に多い原因は何ですか?—膀胱にためることができる尿が少ないこと(膀胱容量の減少)

膀胱容量の減少による夜間頻尿の頻度は2割程度に過ぎません。夜間頻尿の原因として、高齢者では夜間多尿が多く、若年者では夜間膀胱容量の低下がより一般的な病因とされています。
一回あたり100ml排尿する人と一回あたり300ml排尿する人では当然排尿回数が変化します。一回に膀胱にたまる量が少なくなると、夜間尿量が同じでもトイレに行く回数が増えます。昼間の頻尿やおしっこが我慢できない等の症状のある場合、膀胱容量の低下が夜間頻尿を起こしている原因の可能性があります。膀胱容量の低下の原因は前立腺肥大症(男性の夜間頻尿の原因として最も頻度が高いです)、過活動膀胱(女性の過活動膀胱の方の40%に夜間2回以上の夜間頻尿が認められたということです)、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群、骨盤臓器脱、神経因性膀胱などの疾患があります。

 夜間頻尿 の3番目の原因は何ですか?—眠れないこと(睡眠障害)です

高齢者では睡眠が浅く、分断されるため、覚醒しやすく、夜間頻尿になってしまいます。睡眠障害と夜間頻尿は表裏一体です。
アルコールを飲んで眠ると良く寝られたと言う方もいらっしゃいますが、アルコールを飲むと眠りやすくはなりますが、抗利尿ホルモンの分泌を抑制し、利尿をきたすため夜間の排尿量が多くなります。また睡眠が浅くなり、中途覚醒が起こりやすくなり、夜間頻尿の原因となります。
夜遅くまで、明るい光の下で起きている方はメラトニンが低下してきます。メラトニンが抑制されると夜間頻尿の原因となります。LEDは特にメラトニン分泌を抑制します。
メラトニンの血中濃度は年とともに低下します。夜間頻尿の患者さんでは更に低下しています。メラトニン濃度の低下により睡眠が浅くなり目が覚め、尿意があるとトイレに行くことになります。
*メラトニンとは、松果体から分泌されるホルモンです。体内時計に働きかけることで、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があり、「睡眠ホルモン」とも呼ばれています。メラトニンは、年齢を重ねるとともに分泌量が減ることが明らかになっています。
不眠症、睡眠時無呼吸症候群、精神疾患、むずむず脚症候群、薬の副作用、アルコール、カフェインなどで起こります。このうち睡眠時無呼吸症候群は特に睡眠障害の中で頻度の高い夜間頻尿の原因疾患です。いびきと著しい夜間頻尿という組み合わせは、感度97.4%の睡眠時無呼吸症候群の予測因子です。夜間頻尿のすべての患者、特に50歳未満の若い男性患者では、睡眠時無呼吸症候群を診断の可能性として考えるべきであることが示唆されています。

どのような事を聞かれますか?また診察されますか?

心臓病、糖尿病、高血圧、腎機能障害、睡眠障害、前立腺肥大症、過活動膀胱など現在治療している病気、そのために服用している薬、過去にかかった病気、健診結果、現在の排尿状態、水分、カフェイン、アルコールなどの摂取、尿漏れの状態などを聞かれます。また膣外に突出する骨盤臓器脱、下腹部の膨隆、下肢のむくみ、全身のむくみ、神経学的評価等を確認されます。夜間頻尿特異的QOL質問票など、排尿に関する質問票を記載していただくこともあります。

 夜間頻尿 だとどのようにして分かるのですか?

夜間におしっこに起きた回数、その時のおしっこの量などを聞いて判断しますが、それだけでは分からないことも多いです。それではどのようにするのでしょうか?排尿日誌というものがあります。一日のおしっこをした時刻、その量を、また飲んだ水分などを細かく記入していただくものです。お漏らしをした時刻、その量などを記入してもらうこともあります。排尿日誌を記入してもらうことにより、夜間や一日の排尿回数、夜間や昼間の尿量、一日の尿量、膀胱にためることができる尿量などがわかり、夜間多尿(頻尿)なのか、一日を通して多尿(頻尿)なのか、水分の飲み過ぎはないかなどが分かります。もちろん記入ができない方もいらっしゃいますので、その時はケースバイケースです。

 夜間頻尿 に対してどのような検査をするのでしょうか?

検尿(おしっこを調べます):尿の比重、浸透圧などで尿が濃縮、希釈されているかみます。白血球の数で、尿路感染の有無などをみます。赤血球数で血尿の有無などを、細胞診で悪性細胞が出ていないかなどを調べます。急性膀胱炎、前立腺炎、膀胱腫瘍、尿路結石などにより異常が出現します。

採血(血を調べます):糖尿病、腎機能、電解質異常、心臓への負担、前立腺癌(PSA検査)があるかなどを確認します。

超音波検査:前立腺肥大症、膀胱腫瘍、尿路結石などがないか確かめます。また排尿後に残尿がないか確かめます。

尿流量検査:実際にトイレでおしっこをしてもらい、現在の排尿状態が正常か、排尿力に低下がないか、排尿時間はどの程度か、排尿パターンはどうかなどを確認します。

 夜間頻尿 の時、日常生活で気を配ることとは何ですか?

1.水分の取り過ぎに注意が必要です。1日の飲水量は体重の2~2.5%が奨められています。つまり体重60kgの方は1200~1500mlです。特に夕食後の水分の取り過ぎに注意してください。脳血管障害、虚血性心疾患、尿路結石などで、水分の取り過ぎをしている方がいます。カフェイン、緑茶を日中飲むことは利尿作用を利用することになり有用です(飲み過ぎなければ)。

2.夕方に30分以上の散歩、軽い運動してください。(もちろん、できる方のみです)

3.むくみ対策用の弾性ストッキングを日中はいておきます。朝起きてから夕方まで、持病がある人は医師に相談してからにしてください。日中に下肢にむくみが生じ、朝より夕方ではむくみのため5kg~1kgほど体重が増えて、夜間横になると血液量が増えて夜間多尿の原因となります。これを防ぐために着用が、奨められています。

4.足上げ:座布団などの上に足先が10~15cm上がるようにして仰向けになります。昼から夕方までの間に、30分を目安に行ってください。

5.日光に当たってください。(夜間のメラトニン分泌量が増加します)

6.減塩は重要です。徐々に食事を薄味にしてください。

7.就寝時の保温が大切です。

8.保温と関係しますが、寝る1~2時間前にお風呂(40~41度で約20分間)に入って湯船につかり、体を温めてください。

9.就寝前のアルコール、カフェインは避けてください。

10.ベッドサイドの便器を使用することで、転倒のリスクを低減できます。トイレまでの通路を照らすために、常夜灯の使用を検討してください。

 夜間頻尿 の治療はどのようにするのでしょうか?

1.原因疾患に対しての治療を行います。

心不全、高血圧、慢性腎臓病、心因性多尿、尿崩症、口渇中枢の障害などそれぞれの病気に対する治療となります。

2.膀胱蓄尿障害(膀胱に尿をためておくことに関する障害)に対する治療はどうするのですか?

前立腺肥大症、過活動膀胱、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群、骨盤臓器脱などに対する治療となります。

3.睡眠障害に対する治療はどうするのですか?

睡眠に対する治療になります。作用時間の短い軽い睡眠導入剤を使用します。筋弛緩作用の少ない非ベンゾジアゼピン系の薬です。睡眠時無呼吸症候群のような低酸素症の患者では心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の分泌が増加し、夜間ナトリウム利尿と夜間頻尿の増加をもたらすと考えられています。睡眠時無呼吸症候群では持続陽圧呼吸療法により心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)値を低下させることができ、夜間頻尿が改善されます。

*心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)は、心房の心筋細胞で作られる利尿ホルモンです。腎臓のナトリウム排泄を増加させ、余分な水分も排泄されるため、利尿剤として作用します。うっ血性心不全やコントロールされていない高血圧は分泌が増加します。

4.薬の副作用で多尿になっている場合はどうしますか?

薬剤などによる副作用として夜間多尿となっている場合は薬剤の変更などを行います。

多尿の方に有効な治療を2つあげます。

5.デスモプレシン(ミニリンメルト):腎臓の集合管に作用する抗利尿ホルモンのバソプレシンと同じ働きをします。集合管での水の再吸収を促進し、尿量を減らします。ただし、低ナトリウム血症という副作用に注意が必要です。水分を出ないように止めてしまうため、夜間、血が薄まってしまうことがあります。嘔吐や意識障害を起こすことがあります。低ナトリウム血症は治療開始1週間までに発症する可能性が高いため、低ナトリウム血症のリスクがある方では、最初の1週間後、次に1ヵ月後、その後は定期的(通常6ヵ月ごと)に血清ナトリウム値を確認すべきです。

上記の病気がない、または病気に対する治療を行っているにも関わらず夜間多尿がみられる方で男性の場合、デスモプレシンの投与が可能です。おねしょでも、デスモプレシンを使用しますが、投与量が違います。

*アルギニン・バソプレシン(AVP)は、視床下部で産生され、下垂体後葉から貯蔵・放出される抗利尿ホルモンです(視床下部室傍核と視索上核の大細胞性神経分泌細胞で製造されています)。血漿の浸透圧が上昇したとき(高ナトリウム血症)や低血圧のときに分泌されます。AVPは集合管や遠位尿細管に存在するV2受容体に結合し、これらの部位での水の透過性と吸収性を高め、最終的に尿量を減少させます。

6.ヒドロクロロチアジドまたはフロセミドなどの短時間作用型薬剤を服用している方では、利尿療法のタイミングを調整することにより、夜間頻尿の症状を大幅に軽減できます。これらの短時間作用型利尿薬は午前中に投与するのが通例ですが、午後に変更することで、夜尿症患者に顕著な効果が得られる場合があります。利尿剤が就寝時間までに切れるようなタイミングをはかる必要があります。