蜂(ハチ)に刺されたら、どうしたらいいですか?-大和クリニック-木更津市の皮膚科

蝶のように舞い、蜂のように刺す

Float like a butterfly, sting like a bee.(蝶のように舞い、蜂のように刺す)(モハメド・アリ)アメリカの有名な元プロボクサー、モハメド・アリは、ドゥルー・バンディーニ・ブラウンと共に試合前にパフォーマンスとして、このフレーズを叫んでいたとのことです。「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と形容された流麗なフットワークと切れ味鋭いジャブを駆使したボクシングスタイルで観客を魅了しました。

私の子供の場合、墓地でハチに刺されました。どの種類のハチに刺されたかは不明でした。ハチの針は見当たらなかったので(ミツバチではなさそう)、その場でハチ毒を押し出し、冷やして、特に全身症状は起こらなかったため、事なきを得ました。

私の息子たちは少年野球のチームに所属していました。遠征先の球場でチームメートがハチに刺されました。ハチに刺されたおこさんと一緒にクリニックに帰り治療をして事なきを得ました。

ハチに刺されるのは良くあることです。

ハチは何種類いますか?

日本にはおよそ4,000種以上のハチが生息していますが、とくに民家周辺に巣を作り、人への被害が多いハチはスズメバチ・アシナガバチ・ミツバチの3種類です。

ハチの被害はいつが多いですか?

ハチの被害は夏から秋にかけて多く、ハチ刺されによる患者数は8月がピークとなります。2110年から2020年の10年間で167人、平均16.7人の死者が出ています。

ハチに刺されるのはどんな人が多いですか?

94%が50才以上の方です。80才以上が30.5%を占めています。ミツバチに刺されるのは養蜂家の方々が多く、一般人が刺されることは稀です。アシナガバチやスズメバチの場合は、庭木の手入れやハイキングなどの際に刺されることが多いです。ハチ刺されのリスクが高い職業は林野事業関係者、電気設備業者、ゴルフ場、養蜂業、農業などです。

ハチ毒は似ていますか?

アシナガバチとスズメバチのアレルギー反応を誘引する物質が似ているため、アシナガバチに刺されてアナフィラキシー反応を呈した方は、スズメバチに刺されても同様の症状を呈することがあります。一方、ミツバチのアレルギー反応を誘引する物質はアシナガバチやスズメバチのものと似ていないため反応を起こしにくいと考えられています。

ハチに刺された時はどのような症状がでますか?

ハチ刺されは、一時的な痛みや不快感から重度のアレルギー反応に至るまで、さまざまな反応を引き起こす可能性があります。(①ハチ毒に対するIgEを介したアナフィラキー,②IgEを介さないが多量のハチ毒が注入されたことによるアナフィラキシー様反応の2種類が起きます)刺されるたびに常に同じ反応が起こるというわけではなく、次の反応が必然的により深刻になるというわけでもありません。2回目以降はハチ毒に対するアレルギー反応が加わるため、注意が必要です。皮膚テストや免疫血清検査を施行した結果、ハチ毒に感作している人は、一般人口の15~25%とされています。2~3年以内にハチ刺傷を経験し、全身症状を呈さなかった場合でも、皮膚テストやハチ毒特異的IgE抗体を測定すると20~30%の人は陽性です。ハチ毒は反応時間が早く、ハチに刺されてからその多くは約15分以内には症状が出てきます

*IgE抗体とは免疫グロブリンと呼ばれてるタンパク質の一種で、1型アレルギー反応(即時型アレルギー)に関与します。

ハチに刺されて軽度の反応の時はどのようになりますか?

ほとんどの人が、刺された部位に鋭い痛みを感じ、刺し傷部分の周りにわずかな腫れを起こしますが、数時間以内に消えます。

ハチに刺されて中程度の反応の時はどのようになりますか?

刺された部位の腫れ、赤みが1~2日ほど増大しますが、5〜10日で解消します。

ハチに刺されて重度の反応の時はどのようになりますか?

じんましんやかゆみ、紅潮などの皮膚反応、のど、舌の腫れ、まぶたの腫れ、唇の腫れ、喘鳴、呼吸困難、嘔気、下痢、失神、血圧低下、意識喪失などのアナフィラキシー症状が起きます。すぐに治療が必要です。ハチ刺傷による全身症状の有無に関わらず、ハチ毒特異的IgE抗体陽性者が再刺傷により全身症状が出現する確率は10~17%とされています。過去に全身アレルギー反応を起こしたことのある人は、もう1度刺されると、また反応が起こる可能性が非常に高いです(次に刺されたときにアナフィラキシーの可能性が25%から65%になります)。ショック症状は顔を含む頭部や頸部を刺された場合に多く発現する傾向がみられ、極めて短時間(刺傷後数分~10数分)で症状が現れます。症状がでるまでの時間が短い程重症になる可能性が高く危険です。ハチ再刺傷までの間隔が短いほど(1~2年以内)、アナフィラキシーを呈する可能性が高いです。ハチ刺傷におけるアナフィラキシーを経験した方の抗体陽性率は、年数とともに低下し、ハチ毒抗原皮膚テストで約12%/年の割合いで年月と共に陽性者が陰転化すると報告されています。

ハチに刺された時の応急手当はどうしますか?

ミツバチに刺された場合、かかり(逆とげ)の付いた針が残されています。ミツバチに刺されたら、出来るだけ早く針を取り除く必要があります。多くの場合、毒袋を残していくため、取り除かない限りは毒を送り込み続けます。そのため、取り除くのが早ければ早いほど、毒の流入を早く止めることができます。慎重に取り除きます。これは、とげのある針の下をナイフの鈍い側、クレジットカードや紙の端、またはきれいな指の爪でこすることによって行うことができます。ピンセットなどは毒袋に穴をあけたり押しつぶしたりして、症状を悪化させる可能性があるため避けた方がよいと言われています。爪などで傷口周囲を圧迫し、毒液をしぼり出します(ハチ毒は水に溶けやすいので、傷口から毒液をしぼり出すように、もみながら流水にさらすと効果的)。アウトドアー用の吸い取り器具も売られています。痛みを和らげるための保冷剤、冷湿布などで冷やします(毒の吸収を遅くすることができます)。かゆみや炎症を軽減するための抗ヒスタミン薬の外用、またステロイド剤の外用を使用することもあります。もし内服薬がある場合は医師の指示に従って下さい。

状態が改善しないときは、医療機関での治療となります。

自己注射可能なアドレナリン「エピペン®注射液」は、アナフィラキシー反応が起こる恐れのある人に処方されます。医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤です。エピペンを使用したときも、念のため医療機関に受診してください。

ハチに刺された時、医療機関にかかる必要がある場合とはどんな場合でしょうか?

じんましん、呼吸困難などのアナフィラキシー症状が出た場合、目を刺された場合は場合は救急車を呼ぶ必要があります。複数箇所刺された場合、以前に刺されたことがある場合(症状がなくても)医療機関に念のためかかった方が良いと思います。

ハチアレルギーの診断はどうしますか?

皮膚プリックテストを行います。ハチ毒特異的IgE抗体を調べます。

ハチ毒アレルギーの根本的治療として,体質改善を目的としたハチ毒エキスによるアレルゲン免疫療法が知られています。欧米諸国では30年以上前より施行されており、その有効性(約80~95%)と安全性が確認されています。ハチ毒エキスを用いたアレルゲン免疫療法は、副反応として治療中にアナフィラキシー反応が出現するリスクがあること、日本では保険の適用がないため、実施している医療機関は一部に限定されます。

予防はどうしますか?

ハチは黒いものを攻撃する傾向があるので、白い服装や帽子を身に付けることを心がけてください。鮮やかな色の服、香水や香りのするヘアスプレーは避けてください。ハチがあなたの周りを飛んでいる場合は、腕を振り回さずにゆっくりと立ち去ってください。既知のハチの巣やハチの巣に近づかないでください。虫除けを使用してください。

TEL:0438-25-2515